症例&コラム

他院で失敗された親知らず抜歯について

他院で失敗された親知らず抜歯

こんにちは、オーラルプロポーションクリニック 歯科&矯正歯科の歯科医師の井上です。
先日、他の歯科医院で横向きに生えていた親知らずを抜歯した患者様が、当院にご相談にいらっしゃいました。
ご予約の段階で、抜歯後10日経過しても膿が出続け、強い痛みが治まらないとのことで、不安を抱えながら来院されました。
以前の歯医者で再度診てもらった際も、「経過観察」としか言われず、患部の洗浄のみで終わってしまったとのことです。


親知らず抜歯後の痛みの推移と異常の兆候

痛みや膿の症状が出ているにも関わらず、治療を何もしてもらえないというのは通常の歯医者では考えられないことです。
通常、親知らず抜歯後の痛みは、1~2日がピークとなり、その後徐々に治まり、多くの場合1週間以内に痛みは消失します。
しかし、抜歯後に膿が出るという症状は、通常の治癒過程では見られません。
膿が出る場合、親知らず抜歯後の部位で何らかのトラブルが発生している可能性が疑われます。

親知らず抜歯後に発生するドライソケット

今回の患者様の症状を確認するため、親知らずを抜歯した部位をCT撮影で詳しく調べました。
結果として、抜歯後の傷口が完全に開いており、膿が溢れ出している状態で、これは典型的なドライソケットでした。
ドライソケットは、親知らずを抜歯した後に血液の蓋が形成されず、骨がむき出しになることで強い痛みを引き起こす状態です。
横向きに生えた親知らずの抜歯では、傷口が大きくなることが多く、縫合が不十分だとドライソケットのリスクが高まります。
一般的な対処法としては、患部の洗浄や鎮痛剤の投与、保護材の詰め替えを行いながら自然治癒を待ちますが、今回の症例では傷が深く、自然治癒だけでは改善が難しいと判断しました。
そこで、再生医療技術であるCGF治療を提案し、傷口の充填と再縫合を行いました。


親知らず抜歯後の傷口再生を促すCGF治療とは?

CGF治療とは、患者様自身の血液を使用して再生力を活用する治療法です。
濃縮された血小板や成長因子を含むゼリー状の物質を患部に充填することで、親知らず抜歯後の傷口の治癒促進、痛みの軽減、止血効果を得られます。
この治療法は、再生医療分野で注目されており、難症例の親知らず抜歯後の治療として非常に有効です。

CGFの仕組みと親知らず抜歯後の再生治療

CGF(Concentrated Growth Factor)は、患者様の血液を専用の遠心分離機で処理し、血小板や成長因子を濃縮して得られる物質です。
これを親知らず抜歯後の傷口に使用することで、以下のような再生効果が期待できます:

成長因子:細胞の増殖や修復を促進
血小板:出血を抑え、治癒を助ける
フィブリン:患部を保護し、再生をサポート

親知らずの抜歯後にCGF治療を受けるためには、採血が可能な歯科医師と専用機器が必要です。
そのため、どの歯科医院でも実施できる治療法ではないため、CGFを提案する歯医者は多くありません。

CGFのメリット

CGFでは、患者様ご自身の血液を使用するため、アレルギーや感染症のリスクが低くなります。
また、生体由来の成分で自然な治癒力を促進することができます。
親知らずが深く埋まってしまっていたり、横向きに生えていて傷口が大きくなってしまう場合には非常に有効な治療と言えます。

無痛治療で行うCGF

今回の患者様は痛みに耐えることが難しいとのことでしたので、静脈内鎮静法を併用した無痛治療で治療を進めることにしました。
無痛治療は腕からの点滴麻酔により、ウトウトと眠ったような状態の中で治療を行うため、治療中の痛みや不快感を感じずに治療を終えることができます。
すでに強い痛みがある場合や、処置が大掛かりになる場合は、無痛治療で行うことで患者様の精神的・肉体的な負担を軽減することが可能になります。


難症例の親知らず抜歯には歯科医選びが重要

横向きや深く埋まった親知らずの抜歯は、傷口が大きくなるため、適切な術後管理が求められます。
今回の患者様は、治療後4日目に経過観察で来院され、傷口の治癒が順調であることを確認しました。
CGFの治療経過は良好で、痛みも収まってきている状態で、非常に喜んでいらっしゃいました。
まっすぐに生えていない親知らずや、歯肉に埋まってしまっている親知らずの抜歯は通常大学病院を紹介される事が多いですが、開業医でも行えないわけではありません。
しかしながら、傷口が深く、大きくなってしまうような難症例親知らずの場合は、予後までしっかりと治療ができる歯医者であるのかということを確認することが大切です。
今現在、ご自身の親知らずが難症例に当てはまる場合は、親知らずの抜歯を専門的に行っているのか、外科出身の歯科医師が対応に当たるのか、CGF等、親知らず抜歯後の傷口の再生医療を行える歯医者であるのかということを確認してみてください。

当院では、2023年だけで法人全体で年間300本以上の親知らず抜歯を行い、無痛治療や再生医療を取り入れた丁寧な治療を提供しています。
また、無痛治療(静脈内鎮静法)や全身麻酔を用いることで、無痛での親知らずの複数同時抜歯も行っています。
親知らず抜歯をお考えの方は是非当院にご相談ください。

今回の患者様は「地獄のような日々が嘘のように終わった」「CGFをもっと早く知っていればよかった」との感想をいただき、大変喜んでお帰りになりました。
患者様が笑顔で毎日をお過ごしいただけるようになることで、また頑張っていけると感じた1症例でした。

【監修】歯科医師 院長 井上勇人

昭和大学歯学部卒業
歯医者が怖い患者様に寄り添いながら治療を行っていきたいと考えております。安心してどんなことでもご相談ください。