症例&コラム
補綴学会認定医が考えるソケットプリザベーションについて
補綴学会認定医が考えるソケットプリザベーション

今回は補綴学会認定医である私が考える、ソケットプリザベーションについてご説明いたします。
ソケットプリザベーションとは
ソケットプリザベーション(Socket Preservation)とは、歯を抜いた後の抜歯窩(ソケット)を保護し、骨の吸収を防ぐために行う処置のことです。この手法は、抜歯後において、将来的なインプラント治療やブリッジ、義歯装着をスムーズに行うために非常に重要です。
当院が、抜歯をしたあとにソケットプリザベーションを行い、骨の吸収を最小限に抑えることを大切にしているのかという理由を数々の論文結果を元に説明していきます。
抜歯後に起こる骨吸収
患者様にはあまり知られていませんが、抜歯後には骨吸収が起こります。骨吸収とは、歯を抜いた後にその周囲の骨(顎骨)が失われる現象です。
歯がなくなると、その部分の骨に刺激がなくなるため、自然に骨の密度が低下し、体積が減少することがあります。
この現象は時間の経過とともに進行し、特に上顎では早い段階で骨吸収が起こることが一般的です。
抜歯後の骨吸収は大きく、抜歯後6ヶ月の平均吸収量は、水平的に3.79±0.23mm、垂直的に1.24±0.11mmであることが報告されています。
骨吸収が起こると、歯茎がへこみ、口元が不自然な見た目になるだけではなく、インプラントが安定しないため骨造成が必要になる、入れ歯が不安定になる、ブリッジを行う時に隣接する支台歯に過剰な不可がかかるなど、抜歯後の治療に大きな影響が生じます。

インプラントの成功率を左右する骨吸収
特にインプラントは骨の密度と幅に成功率が大きく関わります。抜歯後に何も行わなかった場合には、将来的に上顎臼歯部ではサイナスリフト、その他の部位においてはGBRといった人工骨や自家骨を利用して骨を増やすような大規模な手術が必要になり、患者様への肉体的・精神的、費用的にも負担が増すことになります。
ソケットプリザベーションの大きな目的は、抜歯と同時に行うことで歯槽骨の吸収を最小限に抑え、その後の難易度が高い骨造成処置を回避することです。
この処置を行うことで患者様の将来の治療を最小限にとどめ、治療の選択肢を広くすることができます。
ソケットプリザベーションを行うために必要なこと
ソケットプリザベーションを行うためには「骨補填材」「メンブレン」といった専用の材料や「PRF(Platelet-Rich Fibrin)作成装置」といった血液からフィブリンを抽出する機器が必要になります。そういった準備がない歯科医院では行いたくても行えないのがソケットプリザベーションです。
当院では「抜歯をして終わり」ではなく、患者様の口腔内の状態によって適宜ソケットプリザベーションを行っております。

ソケットプリザベーションを行える歯科医院を選びましょう
一生懸命頑張ったけれど歯を残せないといわれ、安易に抜歯を選択することは勿体ないことです。残せない歯を残せるかもしれない、もしくは、残せないかもしれないけど次の治療の成功率を上げたい方は是非一度治療計画だけでもお聞きに来院いただければと存じます。

【監修】歯科医師 渥美憲人
補綴認定医
患者様の口腔内全体を考えた全顎的な治療をご提供しています。